中国の不動産時価総額が、米国とEUと日本を合わせた額を超えたというニュースに、中国市民はよろこんでいると言う。こういう話は、日本の平成バブル盛んなころ、東京の時価で米国を買えるというあり得ないことが話題になった。あの時の日本と、いまの中国は瓜二つだ。バブルが、社会的な病理であることを改めて実感させる。

 

『レコードチャイナ』(11月21日付)は、「中国の不動産時価総額が米国・EU・日本を超えた?」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国メディア『鳳凰網』(11月19日付)は、最近中国のネット上に掲載された株式・不動産時価総額を紹介。それによると、『中国の不動産時価総額の合計は65兆ドル(約7310兆円)となり、米国とEUと日本を合わせた額の約60兆ドル(約6750兆円)を超えた。しかし、中国の株式時価総額は6兆ドル(約675兆円)で、米国とEUと日本を合わせた額の10分の1ほどに過ぎなかった。中国の不動産時価総額は、株式時価総額の10倍となったが、米国やEUでは不動産と株式の時価総額は同じだった』という」

 

不動産時価がバブルであるかどうかの判断基準は、対名目GDP比でみることだ。不動産時価は、名目GDPを反映すべきものであるからだ。そこから飛び抜けて高い不動産時価はバブルの証拠である。中国の名目GDPは、米国の6割である。それに対して不動産時価が、日本+米国+EUの合計を上回るとは、「空前絶後」のバブルになっている動かしがたい事実だ。

 

中国では、これを喜ぶべきでなく悲観すべき事態だ。中国バブルが崩壊した暁は、中国は完全に沈没する。習近平氏はこの恐るべき事実を知っているだろうか。

 

(2)「65兆ドルという中国の不動産時価総額について記事は、『今年1月の時点で恒大経済研究院の任沢平(レン・ゼーピン)院長が、約43兆ドルと見積もっていた額と比べると大きな差がある』と指摘。しかし、『(総合不動産サービス会社の)サヴィルズは2016年8月の時点で中国の不動産時価総額を39兆ドルと見積もっており、その後の2年で50以上の都市の不動産価格が1割以上上昇し、20以上の都市では2割以上上昇している』と伝え、決してあり得ない数字ではないとしている」

 

架空の計算をしても無意味である。休火山の噴火口で、銭勘定しているような愚かな振る舞いである。基本はGDPである。国の産み出す付加価値総額がGDPである。地価は、そのGDPが還元されるのだ。GDPの規模から飛び離れた時価は、いずれしぼむ運命だ。中国では、その第一歩が間もなく始る。夢から覚めるべきである。