インド洋の島国モルディブで17日、9月の大統領選で野党統一候補として勝利したモルディブ民主党(MDP)のイブラヒム・モハメド・ソリ氏が大統領に就任した。前政権が親中国派を鮮明にしてきたが、「債務漬け」で批判を浴びて親インド派大統領就任という伝統的な関係に戻った。中国がインド洋にまで手を伸ばしたのは、「一帯一路」によってインドを地政学的に孤立させる目的である。

 

モルディブをめぐるインドと中国の対立構図は、新大統領就任式にはっきり現れた。インドはモディ首相が出席したのに対して、中国は日本経済新聞の報道では文化旅行部トップとか。中国の掌がえしの対応が目立った。モルディブでは、中国の「負け戦」という対応だ。

 

『日本経済新聞』(11月19日付)は、「モルディブ新大統領就任、対中債務の圧縮めざす」と題する記事を掲載した。

 

(1)「2008~12年に大統領を務めたMDP党首、モハメド・ナシード氏は今月、記者団に対し『私の知る限り、対中債務は30億ドルに上る。新政権は国の発展と同時に債務を返済していく』と語った。中国側はモルディブの対中債務を6億ドルと主張し数値に開きはあるが、新政権は中国とのインフラ整備事業の契約見直しなどに着手する方針だ」

 

新政権は、30億ドルに上る対中債務圧縮に臨むという。中国は、実質GDPが30億6900万ドル(2016年)のモルディブへ30億ドルも貸し付ける。正常な感覚ではない。返済不能を見込んで、担保権を執行する積もりであったのだろう。新政権は、中国と交わしたインフラ事業の見直しを始める。

 

『日本経済新聞 電子版』(11月20日付)は、「モルディブ、対中FTA見直し、新政権幹部が表明」と題する記事を掲載した。

 

(2)「インド洋の島国モルディブは2017年12月に中国と交わした自由貿易協定(FTA)を見直す方針だ。17日に就任した親インド派のイブラヒム・モハメド・ソリ大統領の参謀役で、与党モルディブ民主党(MDP)党首のモハメド・ナシード元大統領がロイター通信に『対中貿易の不均衡が非常に大きい。(対中FTAを)維持できない』などと指摘した。国連統計によると、17年の中国からモルディブへの輸出額は2億9500万ドル(約332億円)だったが、モルディブから中国への輸出額は62万ドルにすぎない」

 

 中国は、モルディブへの輸出額は2億9500万ドル。輸入額がたったの62万ドルである。これでは、FTAが成り立つ基盤がない。中国に上手く丸め込まれて締結させられたに違いない。FTAを名乗るには、貿易のバランスが取れなければ意味はないのだ。中国は低い関税で利益を上げていたのだろう。中国の悪辣なビジネスが浮かび上がる。