米中貿易戦争が本格化する10月を待たず、7~9月期の上海と深圳に上場する企業利益は、急速鈍化に見舞われたことが判明した。ロイターが上記2市場に上場する1950社の第3・四半期決算を集計したところ、全体の純利益の伸びはわずか3.9%で、過去2年間の四半期ベースの20~55%から急激に悪化した。失速と言って良い。

 

理由は、信用収縮と貿易戦争である。信用収縮とは、銀行が貸倒れを恐れて「貸し渋り」と「貸し剥がし」を行なうこと。日本もバブル崩壊後に経験した道であり、中国でそれが始ったものだ。

 

この金融逼迫については、私の「メルマガ6号」(昨日発行)で詳細に取り上げた。典型的なバブル崩壊後の金融危機に突入したと判断される。ぜひ、こちらを読んでいただきたい。

 

『ロイター』(11月14日付)は、「中国企業に逆風 融資抑制と通商紛争で利益の伸び急鈍化」と題する記事を掲載した。

 

(1)「ロイターが上海と深センの両市場に上場する1950社の第3・四半期決算を集計したところ、全体の純利益の伸びはわずか3.9%で、過去2年間の四半期ベースの20―55%から急激に鈍化した。恒康医療集団の取締役会メンバーのリ・ダン氏は、『資本市場は逼迫しており、借り入れコストが極めて高い』と指摘。M&Aの資金調達を巡る激しい競争に景気の減速が重なり、第3・四半期決算が赤字になったと説明した」

 

「資本市場は逼迫しており、借り入れコストが極めて高い」と指摘している。これは、信用不安が極度に膨らんできた結果である。信用リスクが高まっているので、金利がそれを反映しているもの。これに加えて住宅価格が下落に転じたら、中国経済は「万歳」(お手上げ)だ。信用危機がここまで来たという証拠である。

 

(2)「中国企業の抱える債務総額は第3・四半期に12兆元(1兆7000億ドル)と前年同期比1.6%減り、入手可能な約1400社のデータの比較では9年ぶりに減少。前期比でも11.5%減と、9年ぶりの減少を記録した。深セン市中金嶺南有色金属の幹部は、資金調達が難しい状況の下、製品の値下がりが業績悪化につながったと指摘。『市場環境は実に悪い。起債時には大きな圧力にさらされ、調達はほぼ失敗だった』と話した」

 

債務が減ったのは、「貸し剥がし」によるものだ。銀行が強引に貸出した資金の回収を始めたことを反映している。日本が辿って来た道を、中国も歩き始めたに過ぎない。この先にあるのは、悲観という二文字だけであろう。平成バブル崩壊の後遺症が、これから中国で再現される。そう見ておくべきだろう。

 

(3)「中国企業の売上高の伸び率は13.4%で、前年同期の21.6%からは鈍ったが、年初並みの力強い水準を維持している。しかし中国企業の経営幹部へのインタビューからは、利益については逆風となる材料が目白押しだと読み取れる。需要は弱く、調達コストが上昇しているのに加えて、金融投資のリターンは低迷、在庫が積み上がり、競争激化で製品価格には下押し圧力がかかっている」

 

売上高はまだ二桁を維持しているが、「押し込み販売」に過ぎない。「金融投資のリターンは低迷、在庫が積み上がり、競争激化で製品価格には下押し圧力がかかっている」という記事が、雄弁に舞台裏を覗かせている。「現実の売上」(代金回収)が落ちているので、「押し込み販売」(在庫増)しているので、「売り掛金」となって現金回収が滞っているはずだ。日本がかつて遭遇した現実が、中国で起っている。そう見るほかない。

 

中国企業は7~9月期において、すでに混乱状態に入っている。10月以降、米国の関税第3弾の影響が本格化する中で、混乱はさらに拡大する。企業利益は、マイナスへ落込むはずだ。中国企業は、すでに貿易戦争を継続できる体力を失っている