習近平氏は、11月末開催予定の米中首脳会談に当たり、双方の譲り合い精神を強調した。この習発言は率直に言って「ピンボケ」という印象だ。争点は、技術窃取とWTO違反の是正である。譲り合いとは何か。中国の技術窃取を認める。WTO違反を大目に見る。あり得ない話である。中国が、違法行為をすべて是正することを約束、実行することが解決への道である。

 

『日本経済新聞 電子版』(11月8日付)は、「習主席、米中は譲り合いを、キッシンジャー氏に」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は8日、北京でキッシンジャー米元国務長官と会談した。米中間の緊張について「双方の譲り合いの精神によって友好的な話し合いで解決したい」と述べた。米国内での反中感情の高まりにも言及したうえで、「中国の正当な権益は尊重すべきだ」とけん制した。国営新華社通信が伝えた。習氏は「国際社会は中米関係が正しい方向へ発展することを期待している」として米国に共存を呼びかけた。月末にアルゼンチンで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせた首脳会談での意見交換にも意欲を示した。キッシンジャー氏は「米中は相互理解をさらに深め、よく意思疎通して対立点を適切に管理すべきだ」と述べた」

 

キッシンジャー氏をわざわざ中国へ招き会談する。米国へのアッピールである。トランプ流に言えば、ディールをする腹積もりであろうか。だが、トランプ氏は下手な妥協をすれば、下院で多数派を占めた民主党の批判を浴びるはずだ。民主党も反中国を鮮明にしている以上、トランプ氏は初志貫徹の必要があろう。

 

中国は、時間が経てば経つほど不利になる。資金の純流出が起っているからだ。「中国製造2025」にこだわっていると、外貨準備高を取り崩す事態に陥る、中国は3兆ドル余の外貨準備高を抱えていても、実際に使用可能な資金は5000億ドル強と指摘されている。

 

この点は、私の「メルマガ4号」(11月11日発行予定)で取り上げる。

 

現実に、中国は資金的に余裕がなくなってきた。資金ショートは時間の問題だ。それを覚られないようにしているだけである。こういう事情を完全に知っている米国が、甘い妥協をするはずがない。