保守系韓国メディアの『中央日報』は、これまで「旭日旗」や「慰安婦像」の問題では、反日色を前面に出した報道を続けてきた。徴用工判決でも例外でなく、韓国大法院の判決が出たときは、「長年の恨みを晴らした」と喜ぶ記事であった。

 

だが、喜びきれない一面も吐露する記事が登場していた。日本が、国際司法裁判所へ訴えた場合、韓国が国際条約を守らない国というレッテルを貼られる危惧である。その予感が、現実問題になりそうだということで、すっかり、意気消沈し始めている。もはや、威勢の良い「反日記事」を書けないという認識が出ているのだ。

 

日韓基本条約は、歴とした国際条約である。それを53年後に否定する韓国大法院の判決が、国際間で軋轢を生まないはずがないのだ。そういう冷静な判断を忘れて、「恨みを晴らした」という感情100%の記事を書くこと自体が間違いである。

 

『中央日報』(11月8日付)は、「徴用工判決、韓国政府の遺憾表明に日本が反論、『韓国は国際法違反』」と題する記事を掲載した。

 

(1)「菅義偉官房長官が韓国外交部の遺憾表明に反論しながら遺憾を表明した。菅官房長官は7日午前、定例記者会見で、前日に強制徴用判決をめぐり韓日関係の発展に役に立たない言動を自制するよう求める韓国外交部の声明を一蹴しながら『今回の判決は日韓請求権協定に明らかに反しており、極めて遺憾』と述べた」

 

このパラグラフには、韓国記者の「私情」は一切含まれない客観的な記述である。

 

(2)「続いて『日韓請求権協定は、司法府も含めて、当事国全体を拘束するものであり、大法院の判決が確定した時点で、韓国による国際法違反状態が生じた』と批判しつつ『日本としては韓国政府に対し、こうした国際法違反状態の是正を含めて、直ちに適切な措置を取ることを求めている。現時点では韓国政府が具体的にどんな対応を講じるのかについて見極めをしている』と述べた」

 

ここでも菅官房長官の発言を茶化さずに記述している。


(3)「これに先立ち、韓国外交部は6日夕方、河野太郎外相が韓国大法院の強制徴用賠償判決を『暴挙』と批判したことに対して『過剰対応』としながら遺憾を表明した。韓国外交部は『日本の責任ある指導者が問題の根源は度外視したまま、我々国民感情を刺激する発言をしていることに対して非常に懸念している』と強調した」

このパラグラフも、真っ当な記事である。このように韓国記者が、今回の大法院判決が日韓関係の基盤を破壊するものという認識を持つに至ったことが分る。ここまで冷静客観的な日本関係記事は珍しい。