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中国政府は、「中国製造2025」に代表されるように、補助金をたっぷり付けて中国企業を育成する計画に大童である。米国が批判して止まない点だ。この補助金政策は、EV(電気自動車)用バッテリーでも壮大な無駄をつくり出している。

 

中国では、中小型バッテリー会社の破産・廃業が相次いでいる。中国自動車技術研究センターによると、今年、中国電気自動車バッテリー企業の約30%が廃業したという。中国政府が2月、電気自動車補助金政策を変更した結果だ。1回の充電で、走行距離150キロ未満の電気自動車には補助金を支給せず、走行距離400キロ以上の高性能電気自動車への補助金(5万元、約82万円)は拡大するという政策変更がもたらした混乱である。

 

中国では、「補助金狙い」の起業や特許申請などがもたらす話題がゴマンとある。補助金という「密」を求めて殺到するから中味が薄い。EV用バッテリーの起業熱も補助金引上げという新たに高いバーが設定されると脱落するほかない。特許申請も同じだ。補助金欲しさに申請するが、それで終わりというお粗末さである。

 

『中央日報』(10月12日付)は、「中国の電気自動車バッテリー企業が急減 」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国政府の補助金を背に市場シェアを大幅に増やしてきた中国電気自動車バッテリー企業が『ブーメラン』を受けている。売掛債権などを担保で資金を借りて生産設備を増やしたが、今は製品が余るほどになったからだ。大韓貿易投資振興公社(KOTRA)中国地域本部南京貿易館のキム・スミ調査分析官は、『中国の100余りの上場バッテリー企業のうち半分(52社)が純損失を出した』とし、『2020年前後に全体の90%が危機を迎えるだろう』と予想した」

 

低級品のバッテリーしか生産できない企業は、補助金支給の基準引上げで倒産の淵に追いやられているという。最初からこういう結果は分っていたのだから、「補助金経済」がもたらす社会的なロスは極めて大きい。市場経済の中で揉まれてくれば、こういう資源の無駄は起こらないはずだ。中国のEV用バッテリー・メーカーは、「2020年前後に全体の90%が危機を迎えるだろう」という厳しい見通しである。
 
(2)「これは中国政府が自ら招いた側面がある。生産過剰に陥った企業はほとんど中国政府の補助金を受けて無理に生産施設を拡張してきた。中国政府は昨年3月、2020年まで電気自動車バッテリー生産能力を拡張するという内容の『バッテリー産業促進案』を発表した。中国政府は2月、電気自動車補助金政策を変更した。1回の充電で走行距離150キロ未満の電気自動車は補助金を支給せず、走行距離400キロ以上の高性能電気自動車への補助金(5万元、約82万円)は拡大する。これは技術力が不足する中堅・中小バッテリー企業が市場で淘汰されるきっかけになった。実際、金融危機を迎えている企業は、相対的にエネルギー密度が低い製品(リン酸鉄リチウムバッテリー)の出荷量が多かった。中国政府は2020年に電気自動車に対する補助金を廃止する。この時期になれば、世界最大の電気自動車バッテリー市場の中国は、韓国企業も中国企業と公正な競争が可能になる」

中国政府は、2020年に電気自動車に対する補助金を廃止する予定である。その時、生き残っている中国のバッテリー・メーカーは数えるほどしかない。あとは全て「討ち死」になる。その間に投入した補助金総額はどのくらいになるのか。改めて、中国の補助金誘導経済の非効率性が問われる。

 

電気自動車もこの例に漏れない。中国の地方政府はどこでも、EV育成で補助金をばらまいている。新規のEV企業が、既存の大手自動車メーカーと対抗することは、技術的にも困難を極めるはずだ。技術基盤のない国では、EV企業でも倒産を増やすだけとなろう。「ローマは一日にして成らず」だ。