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10月1日からの国慶節連休が開け、8日の株価と人民元相場は大きく売り込まれた。連休中、米国ペンス副大統領の中国向け過激演説もあって、市場参加者は萎縮ムードになった。現状の米中経済を比較すれば、米国が圧倒的に有利な位置にある。人民元と上海株式が売られても不思議はない環境だ。

 

『ブルームバーグ』(10月8日付)は、「中国本土株を外国人が大量売却-休場明けの8日、約1600億円の売り」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国本土株式市場が1週間の休場から明けた8日、外国人投資家は香港との株式相互接続を通して中国A株を97億元(約1600億円)売却した。この売却額は8カ月前に付けた過去最高をわずかに下回る水準。外国人投資家が好む大型株などで構成するFTSE中国A50指数は5%近く下落し、2016年1月以来の大幅安。一部のトレーダーは、国が後ろ盾となっているファンドなど『ナショナルチーム』の明確な買い支えがなかったことで、午後に下げが加速したと指摘した。低調な製造業購買担当者指数(PMI)や米選挙への介入を試みているとの非難など悪材料が最近相次ぎ、中国人民銀行(中央銀行)の支援策も売りを軽減することはなかった」

 

中国経済に明るい材料は一つもない。唯一の手がかりはPERが10倍程度と低いだけ。PERが低いのは、低い理由があるわけで、相場観だけで買ってきた金融大手も総退却だ。素人の私さえ首をひねっていたほど。日々のニュースを丹念に読み込めば、こういう結果にはならなかったであろう。

 

(2)「金融大手も中国株に対する強気の見方を断念しつつある。モルガン・スタンレー、野村ホールディングス、ジェフリーズ・グループに続き、JPモルガン・チェースも先週、慎重な見方に転じた。HSBCホールディングスのストラテジストは今年末まで中国を『オーバーウエート』とする投資判断を維持するとしているが、8日のリポートでこの判断は『痛みを伴っている』と認めた」

 

時折、「中国株は買いだ」という金融大手の記事が登場していた。そのたびに、驚かされたが、日本のバブル崩壊後の株価を見てきた私には、こういう中国株強気論に拒否感が強かった。中国の株価動向を知る手がかりは、バブル崩壊後の日本株にヒントがあるはず。

 

『日本経済新聞 電子版』(10月8日付)は、「人民元、17カ月ぶり安値、上海株も3.7%下落 」と題する記事を掲載した。

 

(3)「中国で国慶節(建国記念日)の休暇明けとなった8日、人民元はドルに対し大幅に下落した。午後430分(日本時間午後530分)時点は1ドル=6.9135元と20173月以来、17カ月ぶりの安値をつけた。7日に中国人民銀行(中央銀行)が金融緩和に動いたことを受け、当局が元安を容認しているとの見方が強まりつつある。米国との貿易戦争が長期化するなか、市場では「景気下支えのため1ドル=7元の大台を中国当局が許容するかが焦点」(大手銀行)との声が出始めている」

 

10月8日午後4時半、1ドル=6.9135元と20173月以来、17カ月ぶりの安値をつけた。人民銀行が預金準備率を1%ポイント引き下げたことで、人民元安予想の声が強まっている。景気下支えのため1ドル=7元の大台を認めるのでないか、という声もあるという。この場合、人民元は一挙に売り込まれる危険が高まる。それを、覚悟するかは政治的な判断であろう。それほど、1ドル=7元はマジノ線の意味を持つはずだ。

 

(4)「人民銀は7日、2018年に入り3度目となる預金準備率の引き下げを発表。景気重視の姿勢を鮮明にしており、金融緩和に伴い進行しやすくなる元安を放置するのではないかとの見方につながっている。人民銀は8月の元の下落局面では元安進行を緩和しようと相次ぎ手を打ってきた。ただ米国との貿易交渉に目立った進展が見られず、一段の元安容認を模索し始めた可能性がある。『現時点では資本流出は抑制できている』(投資銀行)との判断もある」

 

9月の外貨準備高は、前月末より226億ドル少ない3870億ドル(約350兆円)だった。2カ月連続の減少で、177月末以来12カ月ぶりの低水準。人民元の対ドルでの急落を防ぐため、中国通貨当局が外貨準備を取り崩して元買い・ドル売りの為替介入を実施した可能性があると指摘されている。この状態で3兆ドル台を割ったら、世界の投機筋が殺到するだろう。人民元を取り巻く環境は最悪である。予断を許さないと見る。