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中国は、あらゆることで自国が絶対に正しい、間違っているのは相手である。こういう論法だ。この理屈は、韓国も全く同じである。自分は道徳的に正しいという立場を固執する。この問題は、中国の作家・魯迅(1881~1936)によって徹底的に否定されている点である。

 

魯迅は、次のように指摘したのだ。

 

「他の中国人とは違い覚醒していた思想家の魯迅は随筆『随感録38』でこうした迷夢を『愛国的傲慢』と嘆いた。そしてその愛国的傲慢の種類を5種類に整理した。まず中国は国土が広く物が豊富で、早くから文明の花を咲かせ、われわれの道徳は世界最高だ。2番目に、外国の物質文明は優れているが中国の精神文明はさらに優れている。3番目に、外国の文物は中国にもすでに存在するものであり、さまざまな科学的理論はすでに中国のだれかが話したものだ。4番目に、外国にも物乞いや藁葺きの家、売春婦、南京虫は存在するものだ。5番目に、中国は野蛮な面ですら優れている」(『中央日報』9月19日付コラム「中国人の集合的無意識が韓国にも?」筆者は、イ・フンボム/論説委員)


集合的無意識とは、心理学者ユングの研究によるもの。人々の行動を支配する無意識なものには、本能的なものや祖先の経験した行動様式や経験が遺伝的に受け継がれるとされている。中国人の集合的無意識は、前記の魯迅が指摘したように、5つの項目に分けられるという。

 

私はかねてから、中国人の特色として3点上げてきた。

   中国の歴史は4000年

   中国の国土は世界有数

   中国の人口は世界一

以上の3点に基づいて、中国が世界一の存在であると自惚れていることだ。特に、最高指導部にその傾向が顕著であり、習近平氏はその権化と見てきた。ここへ国粋主義者が側近へ加われば、火に油を注ぐようなもの。今回の米中貿易戦争は、国粋主義者にとって恰好の「肝試し」になっているはずだ。

 

中国は、米中貿易戦争についての中国の立場を明らかにした。

 

『人民網』(9月26日付)は、「中米経済貿易関係の事実を正確に認識すべき」と題する白書を掲載した。

 

「中米の経済貿易関係の現実は、過去数10年間の双方協力の結果であり、経済グローバル化の中で双方が国際化に適応して取り組んできた結果だ。これを変えることは誰にもできない。中国側の発表した白書は、事実を基に次の点を厳かに告げた。

   貨物貿易の貿易収支だけを見て中米経済貿易関係の得失を一方的に評価判断してはならない。

   世界貿易機関(WTO)の互恵の原則から離脱して平等な貿易を論じてはならない。

   契約の精神に背き中国が強制技術移転を行っていると非難してはならない。

   中国が知財権保護で行ってきた非常に大きな努力と成果を抹殺してはならない。

   中国政府による企業の海外進出の奨励を歪曲して企業の合併買収(MA)を通じた先端技術の獲得を推進する政府の行為の一種だとみなしてはならない。

   WTOルールを離脱して中国の補助金政策を非難してはならない。

これら6つの『してはならない』は全て十分な事実に基づくものだ。米側が選択的に無視しないことを望む」

以上の6つの「べからず集」を見ると、中国が全て正しい。間違っているのは米国であるという立場を貫いている。これぞ、まさに中国の集合的無意識を示している。

 

上記のうち、①は正しい。貿易収支の調整は二国間で行なうものでなく多国間でやるべきだ。これには大きな前提がある。WTOの規定する自由貿易原則=補助金支給がゼロというルールを守ることだ。米国が怒っているのは、中国がこの大前提を守らず違反していることにある。この「べからず集」について、米国が一笑に付しているのは、それらを覆す事実が次々に提示されているからだ。私のブログでも毎日、その違反事例を取り上げている。

 

こういう「シラを切る」ことで、中国の国際的な信用は地に墜ちているのだ。そのことに気付くべきである。欧州も中国へ「縁切れ状」を渡す準備をしている。日本は、いざとなれば欧米に同調する。自由と民主主義を国是としている日本が、その真逆を行く中国と同一行動を取れないのは当然のことだ。こうなると、中国の味方になる有力国は一つもない。いくら力んで、「中国が絶対正しい」と言い張っても聞く耳を持つ国はない。この現実を冷静に受入れるべきであろう。