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中国の国内特許件数は世界でも「断トツ」だが、無価値のものが多い。登録5年後に大半が放棄という異常事態である。この裏には、中国得意の補助金政策がある。「特許申請1件で××元」が支払われるのであろう。この補助金漬けが、中国特許を歪めている。

 

メディアにはよく、中国の特許申請件数が多いことが話題になっている。さも、中国は「知財大国」といわんばかりの記事が目に付くが、それは真実を伝えない誤報である。だいたい他国から平気で技術窃取する中国が、「知財大国」になれるはずがない。

 

『ブルームバーグ』(9月29日付)は、「知財大国は張り子の虎、中国の特許、大半が5年内に放棄」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国では「発明」「実用新案」「デザイン」の3種の特許が存在する。ブルームバーグ向けにまとめられた特許・商標を扱う上海の法律事務所JZMCのデータによれば、2013年に認められたデザイン特許のうち昨年時点で91%強が放棄されている。同年の実用新案特許の放棄率は61%、発明特許は37%だった。これに対し、米特許商標局によると、13年に認可された米国の特許では85.6%が保有維持費が支払われており、中国とは対照的だ」

 

中国では折角、特許申請が認められて権利が発生しても、後に放棄される率が極めて高い。例えば、2013年に認められた特許で、昨年放棄された率は次のようになっている。

   デザイン特許は91%

   実用新案特許は61%

   発明特許は37%

 

上記の放棄率を見ると、最初から特許の必要性がなかったにもかかわらず、申請したことが分る。

 

(2)「中国での高い特許放棄率は同国の特許政策が裏目に出たものとみられている。中国は自立した技術大国を目指す取り組みの一環として、企業や大学の特許出願に補助金を提供するなどの特許奨励策を実施している。これにより出願件数が急増し、8年前に国内特許の出願数で日本を抜き世界トップに躍り出た。以来トップを守り、昨年だけで180万件が認められた。一方、これらの特許政策は登録後の補助がなく、保有者は増え続ける特許の手数料の支払いを余儀なくされる問題がある。発明特許1件の保有手数料は年900元(約1万4800円)だが、保有を続けると最大8000元にまで引き上げられる。それ以外のカテゴリーでも年600元から2000元へと増える」

 

中国は、企業や大学の特許出願に補助金を提供する特許奨励策を実施している。これにより出願件数が急増した。だが、特許登録後の補助金がないので「自腹」となり放棄すると見られる。この種の「補助金狙いの特許」が、中国の無駄な特許申請急増の理由である。発明特許1件の保有手数料は、年900元(約1万4800円)だが、保有を続けると最大8000元(約13万1600円)にまで引上げられる。これでは、「無価値な特許」を持ち続ける意味がないのだろう。

 

(3)「一部の企業では従業員が税制上の優遇を受けるために詐欺の特許申請をしたケースも露見している。08年以来、中国は技術革新を推進する国策としてハイテク企業の認定を実施しており、認定された企業には減税や補助金などが提供されることが背景だ。法律事務所オリックのワン・シャン氏は、「現行の司法制度ではこれらの企業の不正な特許申請への効果的な抑止力がない状況だ」と説明している。特許の放棄率からみると、中国が目指す技術大国への道のりは険しい。ワン氏は「中国の特許の質は年々向上しているが、依然として米国の同業には遠く及ばない」とみている。

 

中国は、8年前に国内特許の出願数で日本を抜き世界トップに躍り出た。この裏には、08年に技術革新の推進目的で、ハイテク企業の認定制度が生まれたことと密接な関係がある。認定された企業は、減税や補助金などの恩典が与えられる。これが、詐欺の特許申請が出される背景である。名うての中国政府が、企業に一杯食わされた形だ。「上に政策あれば、下に対策あり」で、要領よく立ち回っている。中国の「ハイテク企業」など、一皮剥けばこの程度の代物だ。