a0007_001510_m

広東省と言えば、中国で最大の経済規模を誇り、GDPでオーストラリアと肩を並べる。中国有数の製造業の集積地であり、中国輸出の約3分の1を占める。その広東に米中貿易戦争の冷たい風が吹き始めた。中国政府の強気の姿勢の足下を吹き抜けているのだ。

 

広東省には、省都の広州やハイテクで発展する深圳が有名である。2017年の市のGDPへの輸出貢献度は、深圳が2.24%、広州が2.15%と中国では1位と2位を占めている。広東省の輸出に占めるハイテク製品の割合は40~45%にも達している。

 

こうしたビジネス環境の広東が、貿易戦争の影響を受けるのは当たり前だ。PMI(製造業購買担当者景況指数)が、ついに好不況の分岐点50を割った。

 

『ブルームバーグ』(9月19日付)は、「中国経済の底堅さに疑念、8月製造業PMI、広東省で50割る」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国南部・広東省の8月の製造業活動を測る指数が分岐点の50を割り込んだ。対米貿易摩擦の長期化に備える中、中国経済の底堅さをめぐり疑念が広がっている。広東省の経済・情報委員会が発表した8月の製造業購買担当者指数(PMI)は49.3に低下し、2016年の早い時期以来で50を割り込んだ」

 

広東省の8月PMIが、2016年の早い時期以来、50を割ったことは象徴的である。中国輸出産業が、貿易戦争の逆風を真っ正面から受けていることを物語る。中国経済が揺さぶられるのだ。

 

(2)「広東省の経済・情報委員会は発表文で、今回の指数は国内にある圧力と「急速に変化する国際的な経済・政治要因による悪影響」を反映したと説明した。財新伝媒とマークイット・エコノミクスの製造業PMIやブルームバーグがまとめている先行指標とは傾向が一致している。ブルームバーグの万千エコノミストは、財新製造業PMIと広東のPMIが、『輸出に軸足を置く企業が既に米中貿易戦争による影響を受けており、これが他の沿海部に広がる』ことを示唆した。『貿易戦争が激化する一方となりそうな状況下で、今後数カ月以内に輸出業者の困難が和らぐことはないだろう』とも同エコノミストは話した」

 

中国のPMIには、国家統計局調べと民間の財新・マークイット・エコノミクス調べがある。広東省のPMIと、後者の民間PMIが似た傾向を示している。国有企業のウエイトが低い結果であろう。ともかく、民間PMIと広東省PMIが、先行き警戒色を強めている。貿易戦争の激化に伴い、輸出産業は厳しい環境に追い込まれた。