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米中の貿易戦争は、際限ない局面を迎えている。ただ、互いに「弾」を撃ち尽くせば、自ずと妥協の道を探り出すだろう。そう考えれば、ここは冷静に見るべきだ。

 

ここ1~2日の米中の動きはめまぐるしいので、分りやすくするために箇条書きにする。

 

   米国は、9月24日から中国からの輸入品2000億ドル相当に関税を科す。関税率は10%だが、来年1月1日から25%へ引上げる。このように、時間差を設けた理由は、米国企業に供給先の変更時間のゆとりを与えたもの。クリスマスを控えて生活用品への値上がり回避も理由だが、供給先変更で中国への本格的打撃を狙っている。

 

   中国が、これに報復して600億ドルに10%関税を同日科す。ただ、これまで10~25%としていた関税率を10%にする。この税率の引き下げは、米国の「怒り」を減らそうという意図であろう。

 

米国の2000億ドルに対して中国は600億ドルである。米国の対中輸入金額に比べ、中国の対米輸入金額が少ないためだ。

 

トランプ氏は、中国が報復したことに怒りを顕わにした。中国がWTO違反による技術窃取を棚にあげ、報復するとは許せないというのだ。

 

『ロイター』(9月18日付)は、「米大統領、中国が貿易通じ中間選挙に影響と批判、追加報復を警告」と題する記事を掲載した。

 

(1)「トランプ大統領はツイッターへの投稿で、11月6日の米中間選挙を控え、中国が貿易を通じトランプ氏の支持基盤の弱体化を狙っていると非難。『中国は、私に忠誠心を持つ米国の農業、農場、工業従事者を標的とし、積極的に米選挙に影響を及ぼす方針をあからさまにしている』とし、これら労働者層をターゲットとするなら『われわれは中国に対し、重大な経済的報復を迅速に実施する!』と述べた」

 

トランプ氏は、中国の報復が11月の米中間選挙への介入と捉えている。共和党の支持基盤の農村などを狙い撃ちしたと解釈しているわけで、トランプ氏の怒りを倍加させた。そこで、「中国からの全輸入品に25%の関税」という発言に結びついた。

 

『日本経済新聞 電子版』(9月19日付)は、「中国報復なら全輸入品に25%関税、トランプ氏表明 第4弾示唆」と題する記事を掲載した。

 

(2)「トランプ米大統領は18日、来週発動する中国への制裁関税の第3弾に中国が報復した場合、残りすべての輸入品に25%の関税を課すと表明した。これまでも全輸入品への関税に言及したことはあるが、25%と税率を明言したのは初めて。強行すれば経済への打撃は避けられず、中国から譲歩を引き出すために圧力をかけた可能性もある。ホワイトハウスで記者団に全輸入品への関税について『やりたくはないが、おそらく選択肢がないだろう』と述べた。『中国との協議はいつでもオープンだが、何らかの手を打たなければいけない』とも指摘し、中国に譲歩を促した」

米国が、中国からの全輸入品に25%の関税を掛ける。これは事実上、困難であろう。世界貿易が大混乱するからだ。このことは、中国が重大な決意をもって臨めというメッセージであろう。まさに、トランプ流「ディール」の極致が展開されようとしている。

 

予断だが、北朝鮮は米国の手で核施設廃棄を打診している。これまで考えられなかった展開である。米中貿易戦争も予想がつかない帰結があるのかも知れない。トランプ外交は、それほど前例のない、相手の意表を突くものである。