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先のアジア大会で、日本のサッカー代表はあえてベテランを外した新鋭でチームを編成した。韓国はベテラン選手で必勝を期した。日本があえてベテランを避けたのは、2020年の東京オリンピックを目指した選手強化策と言われている。

 

日本では、このように目標を定めて練習試合のスケジュールを組み、強豪の胸を借りるスタイルを踏襲する。ところが、中国では弱小チームと練習試合をして、当面の「一勝」を目標にするからいつまで経っても強くなれないのだ。こういう指摘の記事が登場した。

 

『サーチナー』(9月13日付)は、強化試合で強豪国に挑む日本、負けが怖くて弱小国を選ぶ中国、これでは差は開くばかりだー中国メディア」と題する記事を掲載した。

 

(1)「サッカー日本代表は9月11日にキリンチャレンジカップでコスタリカと対戦して3-0で快勝し、森保一監督がA代表監督に就任後の初戦を勝利で飾った。一方、中国代表も同日に強化試合を行い、バーレーンと0-0の引き分けに終わっている。中国メディア『東方網』は12日、強化試合の相手選びの時点ですでに日中両国には大きな『差』が存在すると論じる記事を掲載した」

 

練習試合で、日本が強い相手を求めて己の弱点を知る。中国は、弱い相手と試合して勝ちを求める、と鋭く指摘している。この日中の違いは、それぞれの文化的な条件が異なることから生まれているようだ。

 

第二次世界大戦後、英国の歴史家アーノルド・トインビーの史観が大いに注目された。トインビーは日中の文化が全く異なると指摘した。中国文化は異なる文明に遭遇したとき、それに挑戦せずに逃避して自らの固有の文明に閉じこもる超保守派である。日本は、自ら強い相手に戦いを挑むというのだ。負けてもその理由を分析して、次につなげる。日中のサッカー事情は、このトインビー学説から納得できる説明が得られると思う。

 

(2)「記事は、今月から来月にかけて日本代表がコスタリカ、パナマ、ウルグアイといった南米のW杯出場国との強化試合を行うのに対し、中国の相手はカタール、バーレーン、インドといったアジアのチームばかりであると紹介した。そのうえで、『ジャカルタ・アジア大会ではU23中国代表がサウジアラビアのU20代表に敗戦し、中国サポーターの心は痛んだ。このところ中国男子代表は強化試合を再び行っているが、その意味は正直あまり大きくない。強豪を相手にして負ければ帰国後にサポーターから『八つ裂きの刑』にされると恐れ、自分が勝てそうな相手ばかりを強化試合の相手に選んでいるからだ』と指摘している」

 

中国のサポーターの目は肥えている。香港が英国植民地であったことから、アジアでは、最も早くからサッカーに馴染んでいた。そういう歴史的な事情がある。だから、不甲斐ない負け方をすると厳しい声が飛ぶのだろう。

 

(3)「日本のサッカーについて、『好きか嫌いかは別として、アジアの実力ナンバーワンであることは間違いない。技術、戦術に優れるうえ、諦めない精神も持っている。そして、強化試合においても本当に実力のある強い国を相手に選んでいる。その目的はただ1つ、差を知り、自らの不足点を知って補うことで、日本サッカーのレベルをさらに向上することだ』とした。記事は、アジアの国ばかりを強化試合の相手に選ぶ中国についてまさに、『上を求めれば中が得られ、中を求めれば下しか得られない』という状況であるとし、中国サッカーが発展するには東西のアジアの関門を突き破って世界に出ていく必要があると主張した」

 

このパラグラフの主張は、まさに正論である。強い相手と試合をしなければ、己の弱点を知ることはない。目先の一勝でなく、将来のメダルを狙うには、敗戦も必要になる。何ごとも、将来の目標に向けた一歩が必要なのだろう。