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8月の金融指標が発表された。芳しいものではなかった。マネーサプライのM2は、前年比8.2%増と6月と並んで過去最低を記録した。通貨の動きは実物経済の動きを反映する。中国経済を動かしてきた固定資産投資は、1~8月の伸び率が前年比5.3%増と過去最低となった。

 

中国は、インフラ投資を絞って経済正常化を目指していた。その第一歩を歩み始めた段階で、米中貿易戦争が始まったもの。中国は、産業高度化計画の「中国製造2025」を守るべく、米国の要求する不正貿易慣行是正を拒否した。自らの技術窃取を認めず、米国へ報復するという行動に出たのだ。泥棒が警官に刃向かって暴れ回る構図である。

 

米中貿易戦争は、前哨戦の段階であるが、すでに中国の敗色が濃厚である。米中の貿易不均衡が貿易戦争の原因である以上、大幅出超の中国が受け身であることは最初から分りきっていた。この当然のことを理解せずに、習近平氏を取り巻く国粋主義者たちは、「一歩も引かず対抗する」と見当外れの見栄を張ったのだ。お笑い種である。

 

 

中国国家統計局が、14日発表した主要経済指標は次のようなものだ。

 

   1~8月の固定資産投資は、前年同期比5.3%増。伸び率は1~7月(5.5%)から減速した。統計を遡れる範囲で最低を更新した

 

   1~8月のインフラ投資は前年同期比4.2%増。伸び率は1~7月(5.7%)から減速した。

 

   1~8月の民間の固定資産投資は8.7%増。1~7月(8.8%)から減速した。

   1~8月のインフラ投資は4.2%増。1~7月(5.7%)から減速した。

    8月の鉱工業生産は前年同月比6.1%、小売売上高は同9.0%で、それぞれ増加した。

 

『ロイター』(9月14日付)は、「中国、固定資産投資、過去最低の伸び」と題して次のように伝えた。

 

(1)「キャピタル・エコノミクスはリポートで、『8月の経済活動や投資に関するデータはまちまちだった』とした上で、『全体としては、成長が引き続き下向きの軌道にあるというわれわれの見方にほとんど影響しない』と指摘した。米国による制裁関税が、既に鈍化している中国経済を一段と圧迫するとみられる。中国の当局者は成長支援に政策の軸足を移しているが、アナリストは効果が表れるまでに時間がかかるとみている。また米国がより幅広い製品に関税を課せば、中国企業への打撃は一部しか緩和されないと指摘している」

 

1~8月の固定資産投資は、前年同期比5.3%増。1~8月のインフラ投資は前年同期比4.2%増。いずれも、1~7月の累計伸び率を下回るなど、中国経済を動かしてきたエンジンが減速している。中国は底の浅い経済で、典型的な「土木国家経済」である。この経済が、短期的に盛り返すにはインフラ投資に依存するほかない。「毒を食らわば皿まで」という毒皿主義である。麻薬患者が麻薬に依存するようなものだ。

 

(2)「中国の高官は過去の景気後退期のような大型の刺激策は打ち出さない考えを示しているが、多くのエコノミストは米国の関税措置拡大で景気が大きく減速した場合、当局は成長支援策の強化に乗り出す可能性があるとみている。INGのアイリス・パン氏は、今年と来年の景気刺激策について、世界的な金融危機の際に中国が打ち出した措置と同規模になると予想する。同氏は最近のリポートで、『2018年末までに5兆元、19年前半にさらに5兆元の財政出動が見込まれる』とし、『合計約10兆元という規模は、(当時のGDP成長率を踏まえれば)2009年の4兆元の刺激策と同等の規模になる』と指摘した」

 

このパラグラフでは、中国経済がカンフル剤を打つには、2018年末までに5兆元(約80兆円)、19年前半にさらに5兆元の財政出動が見込まれる、という。これで、2008年当時の「4兆元投資に見合う」効果が期待できるとしている。仮に、これだけのインフラ投資をしても、GDPを浮上させる効果は落ちていることに注意すべきだ。潜在成長率が落ちている経済が、インフラ投資を刺激しても波及(乗数)効果は落ちるもの。これは、日本経済で実験済みだ。日本が現在、過大な国債発行残高を抱えているのはこれが原因である。中国も同じワナに落込むのだろう。