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河北省の避暑地で開催の北戴河(ほくたいが)会議では、予想通りの「習批判」が起こったようである。この非公式会議は、過去の最高指導者や古参の党幹部が集まって開くもの。米中貿易戦争に対する内部批判が噴出したのだろう。中国は、まだ米国と争う経済的な実力はない。本格的な貿易戦争になれば、中国が不利な事態に追い込まれる。こういう現実派の意見が強く出て、習氏への批判へつながったと見られる。

 

これに対する反論が、共産党機関誌『人民日報』に掲載された。

 

『ロイター』(8月10日付)は、人民日報 米中貿易摩擦で政府の国家主義的姿勢への批判に反論」と題する記事を掲載した。

 

この社説には、党序列5位の政治局常務委の王滬寧(ワン・フーリン)政治局常務委員の強い影響を読み取るべきである。王氏は、前記の北戴河会議で司会を務めるはずだったが、党内の批判を意識した結果か、姿を見せなかった。この王氏は、イデオロギーとプロパガンダ(宣伝)の担当である。「習思想」なるものを発案し、習氏の神格化を促進していた人物として知られる。人民日報内部でも影響力を持っているはずで、その王派が反撃の狼煙を上げたと見られる。

 

王氏の主張は、国粋主義である。復古主義でもある。「強い中国」を意図しており軍拡によって世界覇権を狙うべき、という極端な「武断主議者」である。習氏は、この王氏の強い影響を受けていることは間違いない。危険な思想と言うべきだ。

 

(1)「複数の政府関係筋によると、米国との貿易摩擦の激化が共産党内に亀裂を生じさせており、党内では、過度に国家主義的な中国の姿勢が米国の態度硬化を招いた可能性があるとの批判が出ている。人民日報は長文の社説でこうした批判層に直接狙いを定め、ホワイトハウスは内外で非難されている一方、インターネットで「まことしやかな」見解を流布させている向きがいると説明」

 

中国の国際競争力は、経常収支の赤字(今年1~6月)に表わされているように低下してきた。対米貿易黒字ばかりがクローズアップされ、「巨大黒字国」というイメージとはかけ離れ、衰退過程に向かっている。今日の私のブログでも指摘した通りである。こういう状況で、精神論に基づいて無茶な米中貿易戦争に突入したら敗北必至である。

 

(2)「『見解の1つは『中国の戦略が自信過剰で高姿勢過ぎ、米国からの連続パンチを招いている』と中国を批判している。中国は反撃すべきでないとの批判もある。中国が降参している限り、米国は慈悲深く手を出さず、中国と米国の貿易戦争は起こらないだろうという意味だ』と指摘した」。しかしながら、貿易摩擦は中国が招いたものでは全くなく、旧ソ連や英国、日本など、米国の覇権を脅かす恐れがあるとみなした国を米国が追い込もうとするのは歴史が示しているとし、中国は巨大で成長する経済により、その最前線に立たされているとの見方を示した」

 

このパラグラフに見られる、「米国覇権何するものぞ」という意識は、王氏の国粋主義そのものだ。かつての日本は、この意気込みで開戦した。最終的には、2発の原爆を落とされたのだ。現在の米中は貿易戦争である。開戦した日本と次元は異なるが、日中の国粋主義に変わりはない。中国は、米国覇権へ挑戦する前に、国内的な問題が山積している。不動産バブルの後遺症一つ解決できない段階で、米国との覇権云々は笑止千万である。中国国内でも経済重視派はこういう意見が強いのだろう。

 

(3)「社説は、『1世紀以上にわたる大変な努力を経て、中国は世界の舞台の中心に帰ってきた。中国と米国の貿易摩擦において、われわれが踏まえねばならない基本的な事実だ』とし、『象が苗木の後ろに隠れることができないように、中国の大きさや重さは『控えめな姿勢』では隠せない』と強調した」

 

ここでの主張は、完全に王氏のペースである。彼は、理想論を述べているが、それを実現するには盤石な経済基盤を不可欠なのだ。現在のような経常収支の赤字が飛び出すような下で、どうやって米国と経済戦争するのか。中国の経済的状況は、「竹槍」なのだ。この現実をしかと見つめること。王氏の弱点は、経済知識と世界史の流れの把握がゼロという点にありそうだ。