中国は、高級耐久消費財の購買力が急激な低下に見舞われている。住宅・グッチ・iPhoneの売上げが急減しているのだ。不動産調査会社の中指研究院のデータによれば、業界上位100社による2024年1~2月までの住宅販売額は、前年同期比51.6%の落ち込みである。『東洋経済オンライン』(3月26日付)が伝えた。
スイスの高級腕時計は、2月に輸出が減少した。中国本土向けは前年同月比25%、香港向けは同19%それぞれ減った。アナリストの間では、中国での高級品需要は年内に一段と冷え込むと予想されている。『ブルームバーグ』(3月25日付)が報じた。
アップルのiPhoneは、中国出荷台数が2月、前年同月比で約33%減少したことが政府のデータで明らかになった。データによると、国外ブランドのスマートフォン出荷台数は2月に約240万台にとどまった。この出荷数の大半は、アップルが占める。iPhoneは高価格帯である。『ブルームバーグ』(3月26日付)が報じた。
中国消費は、高価格帯が売れず低価格帯へシフトしている。雇用不安が、消費不安へとつながっているからだ。住宅不況が、大きく影響している。一方、中国政府はこうした状態を否定し、明るさを強調するチグハグさをみせている。
『日本経済新聞 電子版』(3月24日付)は、「中国首相『不動産問題』深刻ではない、外資に投資訴え」と題する記事を掲載した。
中国政府は3月24日、北京市で世界大手企業80社以上のトップを招く国際会議を開いた。李強(リー・チャン)首相は不動産や地方債務の問題について「一部の人が想像するほど深刻ではない」と主張し、外資企業に対中投資を呼びかけた。
(1)「外資企業は、巨大な中国市場を重視する姿勢を示すが、首相と直接話し合う恒例の会合は見送られる。中国との意思疎通を不安視する声も出ている。国際会議「中国発展ハイレベルフォーラム」が25日までの日程である。李氏は、開幕式で「世界の企業が中国に投資することを歓迎する」と強調した。また、「中国は今年も5%前後の成長を目標としており、国内需要の拡大に努める。科学技術のイノベーションを推し進め、人工知能(AI)の発展も加速する」と述べた。対外開放も進め「中国の大きな市場は世界にとっても大きなチャンスとなる」と訴えた」
中国政府は、24年のGDP成長率「5%前後」の実現を気軽に考えている節がみられる。もっとも、李首相は全人代の演説で実現に多くの障害のあることを認めたが、この国際会議ではトーンが変わっている。短期間に、中国経済の基調に変化があるはずはないからだ。それは、高級耐久消費財の売行きが急悪化していることに表れている。
『東洋経済オンライン』(3月18日付)は、「中国不動産大手、1~2月の住宅販売額 半減の深刻」と題する記事を掲載した。これは、中国『財新』記事の転載である。
「不動産会社は春節(中国の旧正月)の商戦を盛り上げようと、あの手この手の販促活動を展開した。その結果、一部の都市ではショールームの来店客数が幾分増えたが、顧客側は様子見の雰囲気が濃厚で、成約増にはつながらなかった」。中指研究院のチーフアナリストを務める劉水氏はそう話す。
(2)「劉氏の分析によれば、不動産会社の(値引きや特典などの)販促活動が期待外れに終わった主因は、消費者が自分の収入や中国経済の先行きに不安を抱き、それが住宅需要の縮小を招いていることだ。ただし、1~2月の住宅販売額の落ち込み幅が大きかった裏には、比較対象である2023年1~2月の住宅販売が好調だった反動もある。中国では2022年12月に「ゼロコロナ政策」が事実上解除され、それまで抑制されていた需要が一気に噴出。不動産市況が2023年1月から3月にかけて一時的に回復したからだ」
今年の1~2月の住宅販売が、前年同期比51.6%の落ち込みになった背景には、昨年同期が「リベンジ消費」で一時的回復状況にあったことの影響が出ている。これを割り引かねばならない。
(3)「先行き不安の高まりによる住宅需要の縮小は、これまで市況が相対的に堅調だった「一級都市」と呼ばれる北京、上海、広州、深圳の4大都市でも顕著になりつつある。例えば深圳市は、(不動産投機を抑制するために)住宅購入者に課していた一定期間以上の在住年数や個人所得税・社会保険料の納付記録などの条件を2月に廃止した。北京市は、(郊外の南東部に位置する)通州区の住宅購入制限を一部緩和し、上海市は外郭環状道路の外側の地域で単身者に対する住宅取得制限を撤廃した。にもかかわらず、2月の販売データからは一級都市の住宅取得制限緩和の効果が見えない。深圳、北京、上海のいずれでも、同月の新築住宅の成約面積は前年同月比6割を超える減少を記録した」
これまでの住宅不況は、主として地方都市で顕著であった。「一級都市」は、地方ほどの悪化でなかった。だが、今年の1~2月はついに「本丸」へ住宅不況が波及してきたことを示している。李首相は、不動産問題は深刻でないと見得を切っているが、厳しい現実に直面している。